「ロッシとニコロのおかしな旅」深巳 琳子著
私にとっては「初めて」の作家さんです。
15世紀半ば、フィレンツェからパリへ向かう若き医師ロッシとその弟子、ニコロ少年のドタバタ珍道中です。
師匠と弟子があちこちで様々な騒動に巻き込まれます。師匠の性格上、あえて巻き込まれることもたびたび……。濡れ衣を着せられたり謎解きをしたり牢屋に入れられたり。活版印刷とか瀉血とか、当時はこんなだったんだなぁ、というのがよく分かります。西洋の歴史が好きな方なら楽しめると思います。よく調べられていると思います。
師匠ロッシのオカッパ頭とかね(笑)
ただ、漫画としては「地味」。表紙を見てまず「地味!」と思いました(笑)
「若い」という設定の医師ロッシが若者っぽく見えませんし、なにしろ男二人ですからねぇ……絵柄としても……(汗)
同じ時代のフランスを描いた漫画として、山岸 凉子の「レベレーション(啓示)」があります。
ジャンヌ・ダルクがテーマなので、内容は全く違いますが。
「レベレーション(啓示)」も絵は……正直、「日出処の天子」の頃と比べると大分粗くなってしまったなぁ……という感想です。
「ロッシとニコロのおかしな旅」の方が、丁寧に細密に描かれていると思います。その分、案外お話にボリュームがあります。一話一話は長くないのですが、結構情報量あるよな、と思いました。
が……いかんせん地味です(汗) この地味さはなんででしょうねぇ。主人公の二人も美形ではないですしね。まつげをバシバシにすればいいというモノでもないのでしょうが……。
ロードコメディではありますが、腹を抱えて笑うタイプではなく、ニヤリとさせる方です。
ロッシの性格とか、師匠と弟子との掛け合いとか、何度か読み返してみて「面白いなぁ」とじんわり感じられる……スルメイカのような漫画だと思いました。
主人公は町医者という立場なので、当時の「医療」がどういうものかもさらっと描かれています。なにしろ中世ですから、まだまだ「知」というものに格差があった時代です。迷信や偏見、根拠の薄い民間療法も根強い。主人公なりに「医療」に対する志もあるようなので、それが今後、物語の軸になるかもしれません。
読む人を選ぶかもしれませんが、中世の欧州というキーワードに反応される方は、とりあえず。
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